診療科目一覧

- スポーツ整形外科 肩前方脱臼リハビリテーション -

スポーツ整形外科

行岡病院トップページ > 診療科目・部門一覧 > スポーツ整形外科 > 肩前方脱臼リハビリテーション

肩前方脱臼リハビリテーション

はじめに

肩関節前方脱臼は、上腕骨頭が関節の受け皿である関節窩から前方に脱臼する状態で、脱臼を防ぐ靭帯である関節上腕靭帯がうまく働かなくなることによって生じます。その原因としてはこの付着部である前方関節唇が関節窩から剥がれてしまうこと(バンカート病変)が大半ですが、その他に靭帯そのものが切れたり、上腕骨頭から剥がれたりすることもあります。手術はこの関節上腕靭帯の機能を再建することになりますが、多くは剥がれた関節唇を修復します(バンカート修復術)。関節唇は関節窩に完全にくっついていることもありますが、多くは本来の部位ではないところにくっついているため、靭帯がゆるみうまく脱臼を防いでくれない状態になっています。くっついた関節唇を一度はずし、ゆるんだ靭帯にも緊張がかかるように修復することが大切です。
また、男性のコンタクトスポーツ選手などは本来抜けにくいにも関わらず抜けるわけですから、関節窩や上腕骨頭に骨折が頻繁に発生しています。多くの場合、折れた骨がバンカート病変とともに残っていますので(骨性バンカート病変)、バンカート病変とともに骨折部を同時に修復します。
当院では大半の手術は関節鏡を利用して行っていますが、時に7-8cm程度の皮膚切開を加えて手術を行うことがあります。その代表例が、脱臼を長期にわたって放置して、骨折した骨がなくなっている場合です。大きく関節窩の骨が欠けているにもかかわらず、骨折した骨がなくなっている場合、バンカート病変のみを関節鏡で修復しても再脱臼率が高いため、烏口突起という手術部の近くにある骨を切り離して、関節窩の骨が大きくかけている部分に移植しています。この手術の時にも関節鏡を利用し、より正確に骨を移植できるようにしていますし、同時にバンカート修復術も行います。
年齢やその他の条件により多少差はありますが、関節唇が修復されるまで約3ヶ月かかりますので、この間は過度の負担がかからないようにしつつ、可動域の回復に努めることが大切です。その後、本格的な筋力訓練を開始しますが、筋力を十分に回復させるのにさらに3ヶ月を要します。また、修復した関節唇が十分な強さに戻るまでも術後6-8ヶ月はかかります。コンタクトスポーツ選手の場合、術後6ヶ月からコンタクト練習を再開し、術後8ヶ月からの試合復帰をすすめています。また、骨折した骨を修復した場合や骨の移植を行った場合のスポーツ復帰は、CTで骨がくっついたかを確認してから許可します。
肩を外回し(外旋)することにより修復した関節唇や靭帯に負荷がかかりますので、術後早期には外旋角度を制限しますが、あまりに制限すると外旋角度が少なくなりすぎ、後々肩の動きの障害となります。あまり怖がらずに、目標通りにリハビリができるよう、頑張ってください。特に、ボールを投げたり、打ったりする競技の場合は、肩の動き(特に外旋角度)が完全に回復しなければ復帰できないので、やや早めからリハビリを開始し、さらに投球障害があるような選手と同様のリハビリを行うことにより、スローイングへの復帰を目指します。

手術日(20  年  月  日)       氏名

手術当日(  月   日)

手術後、装具を装着して帰室します。肩関節を下垂内旋位(脇を締め、おなかの上に手のひらをのせた格好)で、固定することが大切です。手指の運動もしっかり行って下さい。

術後1日(  月  日)

血液を引く管を抜きます。固定中に筋肉が痩せないようにする訓練を開始します。また、服の着替えなどの際に、肩を固定したまま、肘の曲げ伸ばしを行います。

術後2週(  月  日)

仰向けになって手術をしていない手を使って、腕を挙げていく訓練を始めます。手術後4週までは、挙上角度は150度までに制限します。1回の運動に10-20秒かけ、なるべく肩の力を抜くように、軽く息を吐きながら行います。まずは、リハビリで行い、こつがつかめたら、自分でも行うようにします。目安は1クール10-20回を1日6クールくらいです。リハビリ後は、必ず10分くらい肩を冷やしてください。

術後3週(  月  日)

仰向けに寝て、肘を体に付けたまま腕を外へ回す(外旋)運動を始めます。手術後4週までは、外旋角度は30度までに制限します。太いヒモははずし、スリングでつるだけで構いません。

術後4週(  月  日)

装具を完全に除去します。挙上および外旋運動を角度の制限なく行うようにします。

術後6週(  月  日)

関節を支えるのに重要な腱板という筋肉および肩甲骨を支える筋肉の訓練を開始します。この時期に関節の動きが良くない人は、リハビリを集中的に行う必要があります。ストレッチメニューも開始します。

術後3ヶ月(  月  日)

筋トレを中心としたリハビリを開始します。(別紙筋トレメニュー参照)

術後6ヶ月(  月  日)

コンタクトのないスポーツは復帰可能です。コンタクトのあるスポーツでは、コンタクト練習を開始します。

術後8ヶ月(  月  日)

コンタクトスポーツでの試合復帰も許可します。

*着替えや入浴時の注意:肘を後ろにひいたり、過度に脇をあけたり、腕を外に回す姿勢は修復部に負荷をかけるので装具が取れるまで禁止です。肘を曲げ、手のひらを腹に乗せた格好とし、入浴時は必ず三角巾を使用してください。また、服をぬぐ時は手術側を最後に脱ぎ、服を着るときは手術側から先に着るようにして下さい。